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A08. アスリートの睡眠

更新日:1月20日

アスリートにとって適切な休息が重要です。一つは大きな大会の後に休息期間を作ること、もう一つは日々の睡眠により疲れを翌日に残さないこと、そして最後に一日の活動期間の中でも気持ちを落ち着かせる時間を持つことです。

では睡眠時間はどれぐらい取ればいいのでしょうか?一般の人たちでは、6から8時間の睡眠が、寿命や高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病のリスクが最も低いとされています。

 しかし、アスリートでは前日の疲労を持ち越さないようにするには8から10時間程度が必要(Sargent C, et al 2014)一般の人たちよりも長い時間が必要という報告があります。

 よい睡眠を取るにはどうすればよいのか?私たちの一日のおおよそのリズムは生物時計が管理しています。一定の時間になると自然に眠くなり、そして一定の時間になると目が覚めるのはこの時計があるためです。その中にはメラトニンという脳の中の松果体から放出されるホルモンがありますが、これは夜の一定の時間、特に暗くなると放出されて、身体に夜であることを知らせて眠気を促すものです。

 一方で、朝起きてから、疲労などによりだんだん眠くなってきます。アスリートで睡眠時間が長いのは激しいトレーニングで肉体的な疲労が大きく、それを回復させるためです。

 ところで、明日は試合のためにいつもよりも1時間早く寝よう、と思って布団に入ってもなかなか寝付けません。体内時計ではまだ睡眠の時間ではないので、寝付けないのは当然ということになります。

 週末も含めて毎晩同じ時間に床に就くことによって睡眠パターンを確立することが大事です。例えば、布団に入る前に2,3分間読書するなど睡眠前儀式を確立して、体を休ませる時間だと体に知らせます。また、もし15分以上寝付けなければ、寝床から出て、安静にし、刺激的な活動はせず、眠くなったら寝床に戻るということも必要です。

  昼寝など仮眠(ナップ)をとりましょう。アスリートは朝練や夜遅くまでの練習、試合での移動などで睡眠時間が削られることがよくあります。また、試合やセレクションの前日には不安緊張で眠れないということがあり、寝不足だと試合でのパフォーマンスが下がるのではないかと不安になり、さらに眠れなくなってしまいます。このようなときには昼寝は睡眠時間を補給するのに有効です。

 昼寝は一般的には、夜の睡眠に影響しないように午後3時までに取るようにするとともに、コーヒーなどを昼寝前に摂っておくと目覚めがよいです。推奨される時間の長さは年齢によって異なり、一般人は10分から30分程度とされていますが、アスリートの場合は体力を使っているのでより長く、2時間ほど取っている人が多いといわれています。

 ところで、健康な若年成人男性に 88 時間寝ないようにさせて、パフォーマンスレベルを調べた実験があります(Van Dongen HPV, 2005)。24時間寝ないと注意力や反応速度は大きく悪化していました。

 しかし、12時間毎に2時間ずつ昼寝すると注意力や反応速度の悪化はほぼなくなっていました。ただ、同じようにしても次の日のパフォーマンスは悪化していたので一日だけ有効なのだと思います。

 ここでわかるのは、試合前夜に寝つきが悪い時に「少しでも寝ておけばパフォーマンスは大丈夫、うまく仮眠を取ればいい」ということです。そのことで安心して、もう少し眠れるようになるかもしれませんね。あなた自身の体験から考えてみましょう。前日にあまり良く眠れなかったときの試合はどうでしたか?それなりのパフォーマンスはできていた、ということありませんか?

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