B06 目標設定(1)3種類の目標
- Professor M
- 1月17日
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更新日:2月11日
大リーグの大谷翔平選手は「自分の夢に自分で限界は設けず、『まだまだいける!』と思うだけで未来は変わる」と言っています。一方で、「『すごく高い目標』を目指すのではなく、ただ昨日より成長することを目指す」とも話しています(児玉光雄.2021)。大谷選手は夢と目標を分けています。
子どものころにプロ野球選手になりたいとか、プロサッカー選手になりたいなど将来の自分について描いているのは夢になります。一方で、目標というと例えば企業の目標では売り上げの具体的な額であったり、または射撃の的であったりと極めて現実的なことになります。

アスリートにとって目標は高すぎると達成が困難で大きなストレスとなり、また、低すぎる目標は簡単に達成できてしまって達成感を得られず、すぐに飽きてしまいます。最高のパフォーマンスを目指すアスリートが毎日モチベーション高く取り組むには、目標設定は極めて重要なものになります。
一般的に目標には3種類あると考えられています。結果目標、パフォーマンス目標そしてプロセス目標です。
結果目標とは、試合に勝つ、オリンピックで金メダルを獲得するといった特定のイベントの勝敗などイベントの最終段階に焦点を当てた目標のことをいいます。アスリートであれば勝ちたい、金メダルを取りたいと思うのが当然です。しかし、そのような結果はアスリート自身の努力だけでなく、対戦相手の能力も影響するとか、天候、開催地、審判、たまたまの体調不良などコントロールできない要素の影響も受ける可能性があります。
パフォーマンス目標とは、自己記録を更新する、今までで最高のパフォーマンスをするというように自分自身のパフォーマンスの達成度を目標にするものです。この目標では比較する相手は過去の自分であることから達成可能性も高く、パフォーマンス中の不安が少なく、優れたパフォーマンスを発揮できる可能性があります。そして何よりも日々取り組む目標やタスクの設定はしやすく、頑張れば何とかなると思えるものです。
プロセス目標は、集中してパフォーマンスが実施できるように努力をするというものです。例えばリズムを保つとかフォームで注意すべき点に集中して実行しようと努力することが目標となります。ストレスが強い時には「いつも通り」にしようと思っても「いつも通り」がわからなくなってしまうことがありますが、そのようなときに戻るべき指標となります。また、ストレスの相手や大会のレベルなどに関係なく、パフォーマンスのプロセスに集中し、実行できるように努力することが目標となるので、質の高いパフォーマンスを実施するのにに役立ちます。アスリートがコントロールできることは、「行動 、集中、努力」(A.C.E.)と言われていますが、まさにそれに当たります。そのため、コントロールできることが対象となるため、この目標の達成可能は高いので、モチベーションも高まります。トップレベルのアスリートが「楽しむ」とコメントすることがありますが、それはまさにプロセスを楽しむことを目標としていることだと思います。
バスケットボールのフリースローで考えてみましょう。選手の最終目標はフリースローを成功させることであり、フリースローを狙う前に、多くの選手は「成功させるぞ」とか「外してはいけない」などと結果に関して考えます。これを目標思考と呼びます。しかし、プロバスケットボール選手でも成功率90%を超える人は極めて稀です。そのようなシュートですから外す可能性も十分あるにも関わらず、実際に外してしまうとがっかりしてしまって、それを引きずってしまったら、元も子もありません。
一方で、フリースローを成功させるために必要なルーティンや正しいフォームを遂行することなどに集中しようと考えることを、プロセス思考といいます。最終目標が設定したら選手はその結果そのものではなく、目標を達成するためのプロセスに集中することを目標とすべきであり、プロセスが正しく行われれば、目標は達成されるといわれています。(Mike Phelps)

大リーグで活躍したイチローさんはプロ入団当初から「高すぎる目標を掲げると達成できなかった時に挫折してしまう。それは目標設定のミスである。頑張れば何とか手が届くところに目標設定すればずっとあきらめないでいられる」。
また、「打率よりも安打数を重視している。それは打率を気にすると、『打率が減るのではないか』と不安になってしまって打席に立つのが怖くなる。しかし安打数は積み重なるしかないから打席に立つのが楽しみになる」。
さらに「首位打者」を目標にしない。それは誰かが物凄く調子良かったりすると、「自分ではコントロールできないことを相手にする」ことになるためと述べています。
Bリーグの千葉ジェッツの富樫勇樹選手は「目の前の課題を徐々にクリアしていくうちに、その先の道を見つけ、将来を思い浮かべていくパターンが多い。」「自分がしっかりとイメージできる道を進み、さらに一歩一歩上を目指していくのが僕のやり方と言っていいだろう。これまでの人生で、遠くにある夢を想像しながら、漠然と頑張った経験は一度もない。」と述べています(富樫勇樹「想いをカタチにする」ポジティブ思考. 2020)。