A09. コントロールできないこと
- Professor M
- 2月4日
- 読了時間: 4分
更新日:2月11日

アスリートが成功するには、コントロールできることはコントロールし、それ以外は手放すことが不可欠であるといわれています(Udelf D. Psychology Today. Posted 2024)。
そしてコントロールできないこととは、例えば、気象条件、対戦相手、チームメイト、審判の判定、怪我、過去の出来事、自動思考、怪我などがあげられています。
屋外競技で風が強いとか小雨が降っているなどパフォーマンスを低下させるものですが、気象条件をコントロールできません。また苦手な相手と対戦したくなくても変えることはできないし、相手のパフォーマンスレベルをコントロールすることもできません。チームメイトの調子を自分がコントロールすることはできなし、審判の判断をコントロールすることもできません。いろいろ予防していても怪我をしてしまうことがあります。以前にしてしまったミスやその試合中にしてしまったミスなど過去を変えることもできません。さらにある出来事に瞬時に浮かぶ自動思考をコントロールすることもできないのです。
ところで、周囲の人たちのアドバイスや発言が負担になってしまうこともあります。そのような方々の発言はコントロールできません。ましてやSNSなどでの一般の方々の意見や批判も自分がコントロールすることはできませんね。
もしこれらコントロールできないことに執着してしまったらどうなるでしょうか?イライラや怒り、落ち込むなど情緒が不安定になります。さらにどうにもならないのに、そのことばかり考えるようになり、大きなストレスになってしまいます。これらは練習や試合でのモチベーションや集中力に大きく影響し、パフォーマンスを低下させます。そしてそのパフォーマンスの低下は後悔を生み、さらに意欲を低下させたり、怒りを増幅させるという悪循環を生むことになります。
従って、アスリートはコントロールできないことは手放すのが重要と言われています。しかし手放すといってもなかなか難しいことです。ではコントロールできないことはどう取り扱えばよいのでしょうか?
そして何よりもコントロールできることに取り組むことが重要とされています。アスリートがコントロールできることとは「行動すること (action)、集中すること(concentrate)、努力すること (effort)」(A.C.E.)と言われています。パフォーマンスを上げるために工夫して取り組みましょう。
長距離・マラソン選手の大迫傑氏は、「もちろんメダルは欲しいにはほしいですけれど、こればかりは相手があってのことなので、選手との(タイム)比較になる。結果を意識するより、大会に向けて100パーセントの力をできるかぎり上げることと、そこから当日で100パーセントの力を出すこと。その結果、100パーセントの力を発揮できたら、何番だろうが、それができることが、僕にとって意味のあることなので。無欲ではないですけれど、一種の開き直りというか。いい意味でメダルを取りに行くことを諦める、というのは大事かなと思いますね。」と話しています。自分でコントロールできないメダルを取ることを目標とするのではなく、自分でコントロールできる「100パーセントの力を出すこと」を目標とすることによって、高いパフォーマンスを目指しているのです。(SportsPicks 2020/5/29【大迫傑】自分の「リアル」と向き合い、理解する)
世界で活躍したサッカーの元日本代表の中村俊輔さんは、ワールドカップの時はニュースやSNSを見ていたそうです(中村俊輔の新たな挑戦「身近な相談相手の存在が大切」)。やはりへこんだということですが、「ただそれよりも批判に負けたくないという気持ちのほうが強かったですね。批判を覆すように努力する気持ちがあったので見られていたのだと思います。的を射た批判もあったので、それは受け止めていましたね。」ただ、このときも身近で信頼できる人と話しており、「家族や友人、仲間などの頼れる相談相手の存在が大切だと思っています」とのことです。