B08. 切り替え方法
- Professor M
- 1月19日
- 読了時間: 4分
更新日:1月26日
試合中でミスして落ち込んでしまう、弱気になりマイナスの結果ばかり考えてしまう、次のプレーで勝敗が決まるかもしれないときに不安緊張で押しつぶされそうになる。これは戦うか逃げるか反応で考えると「逃げるモード」です。または不安恐怖で「フリージング」している状態です。このネガティブ状態から「戦うモード」や「冷静なパフォーマー」に切り替えるにはどうすれば良いのでしょうか?

まずはネガティブな思考や感情を一瞬止めます。そのためにはQuiet Eyesを含むフォーカルポイントを使います。そして、一瞬止まったあとに「戦うモード」に持って行くにはセルフ(ペップ)トークで自分自身を鼓舞します。「冷静なパフォーマー」に移行するにはダイナミックハンドグリップや深呼吸、プレー前のルーティンなどを利用します。
① フォーカルポイント
フォーカルポイントとは集中力を高めるために短時間見つめるものです。例えば、サッカーのコーナーフラッグのポールや体育館の中の目立つ柱など、競技場の中の動かないものであり、あらかじめ決めておくとよいといわれています。
また目から30‐40cmほど離したところを見つめるのも集中力を高めるといわれています。テニスプレーヤーがサーブの前にガットをたり、野球のピッチャーがボールの縫い目を見ているような動作もそれに当たります。いきなり針の穴に糸を通そうとすると、一気に集中できますね。
重要なことは、このような緊急事態に備えて、予め、フォーカルポイントを利用することを強く意識しておくことです。そのためには普段の練習や試合のときに実際に利用していきましょう。
また、サッカーのPKやバスケットボールのフリースローの時などにパフォーマンス前に狙っているところをじっと見つめるQuiet Eye(QE、静かな目)も有効と言われています(Anton GO, et al. 2021).実際にはプロ選手では初心者よりもQEが長いと報告されています。
② セルフ(ペップ)トーク
セルフトークとは独り言のことで、セルフペップトークとは自分で自分を励ますような独り言のことです。セルフトークでは自分を鼓舞するだけでなく、落ち着かせることも含まれます。失敗するのではないかとか、相手の雰囲気に圧倒されてしまっている、過剰に緊張しているようなときに「何ビビってんだ、強気でいくぞ」とか、「ここからギアアップだ」というペップトークや、「大丈夫だ、落ち着け」「次のプレーに集中!」と冷静にさせるような独り言をいうものです。
③ ダイナミックハンドグリップ
バスケットボールのフリースローやゴルフのパターなど不安緊張の場面では、動作がぎこちなくなってしまう(フリージング、チョーキング)ことがありますが、このとき脳の神経回路では不必要な情報処理が行われてしまって、本来パフォーマンスに重要な神経回路の情報処理が阻害されて動作がぎこちなくなると考えられています。
このようなとき、左手のダイナミックハンドグリップが有効とされています(Bhuvanesh D. et al. 2024)。これはプレー前に30〜45秒間、毎秒約2回、左の拳を握ったり開いたりするものです。このことにより、脳への余計な刺激を防ぎ、パフォーマンスを最適化するといわれているなどがあります(Mirifar A, et al. 2020)。チョーキングの場合は、脳が緊張やストレスによって活性化しすぎ、本来のスイングやパットの動作を行うために必要な神経回路の働きが阻害される現象として現れます。
④ パフォーマンス前のルーティン
ルーティンは一つだけを行った場合でも、複数の組み合わせでもパフォーマンスのレベルを上げると報告されています。ただ、パフォーマンスに関係したものの方が有効とされています(Anton GO, et al. 2021)。

ルーティンの種類としては、テニスでのサーブ前のボールをバウンドさせる、バスケットでのフリースロー前のドリブルなど、そのスポーツ特有の運動動作が含まれることを行う身体的なルーティン、パフォーマンスを成功させる映像を思い浮かべるビジュアライゼーション(イメージ)、モチベーションとパフォーマンスを鼓舞する内容を言葉にするセルフトーク、パフォーマンスを行う前に数回深呼吸をするリラクゼーション、Quiet Eye、ダイナミックハンドグリップなどがあります。
ところでゲン担ぎは大事な勝負の前には必ず左足から靴下を履くとか、勝負服を着る、特定のものを食べるというもので、パフォーマンスに直接関係するものではないのですが、安心には一部役立つので、その結果パフォーマンスにも良い影響はあると思います。