B11. 怒りのマネージメント
- Professor M
- 3月2日
- 読了時間: 4分
更新日:3月4日
練習中や試合中に起きてしまう怒りをコントロールするにはどうすれば良いのでしょうか?

試合中は戦うモードに入っているので怒りの感情が出やすくなります。判定に納得できずに審判に怒りがこみ上げて文句を言い、さらにテクニカルファールを取られてしまうとか、退場になる。結局チームに迷惑をかけ、自分の評価も下げてしまった。また、チームメートが簡単なミスをしたときに怒鳴ってしまい、それ以来何となくうまく行かなくなってしまった。
このようなネガティブな出来事に対して怒りを爆発させてしまい、後悔するというのは繰り返されることもしばしばです。これでは安定して良いパフォーマンスを継続することはできないでしょう。
ここでは怒りをコントロールする方法であるアンガーマネージメントについて簡単に説明します(Otis JD., 伊豫 (訳) 2011)。
まず、私たちは、似たような出来事に対しては、似たような考えが浮かび(自動思考)、それに伴った感情や行動が出現するという、その人その人の癖のようなパターンがあることを知っておきましょう。怒りも同様で、個人によって、いつ、どこで、どのような状況で、誰に対して、どう考え、感情が高まり、体に変化が生じ、どういうことを言うか、行動するか、というパターンが決まっているのです。
そこで、冷静に自分の怒りの反応パターンについて整理する必要があります。この時、頭の中だけで整理しようとするとどうしても考えがずれていってしまい、問題点を忘れてしまいがちです。従って、それらを紙に書くなどして整理しておくべきです。

例えば、試合中に(いつ)、コート上で(どこで)、予想外のファールを吹かれたときに(状況)、審判に対して(誰に)、「え、違うだろう!」と思い(自動思考)、「なぜここで間違えるんだ」という考えが進み、頭に血が上って火照ってきくるなど怒りの兆候が出現し、そして怒りが沸騰し(感情)、審判に強く文句を言う(行動)。
次に重要なのは、自分やチームが損しないような、プラスになるような、受け止め方に修正することです。パフォーマンスを高めるためです。冷静に考えましょう。例えば、「審判の位置からはファールに見えてしまうことはあるだろう。」「プレーに夢中で相手に触っていたのを気づかないこともあるだろう」として、「ここで審判に怒りをぶつけるのは良くない。どう見えたか確認をして、今度はそのようなことがないように気を付けよう」などと修正します。
また、実際にそのような場面に遭遇したときに行う切り替え方法を決めておきます。「まず深呼吸をしながら6秒待とう。そして、笑顔で審判から離れよう」と切り替え方法を決めておくのです。
予めこの流れに整理しておき、イメージトレーニングして、癖の修正トレーニングをしておくことが大事です。試合の前にはメンタルリハーサルとしても行いましょう。
2024年4月23日、大リーグのヤンキースのアーロン・ブーン監督が試合開始早々に退場を宣告されました。ブーン監督は、激しく審判に抗議することで知られており、監督就任の2018年シーズンから多くの退場処分を受けてきていました。怒りのマネージメントでいうところの「状況や相手はだいたい決まっている」です。しかし、その日は「主審の勘違いでは?」という疑問の声が上がりました。1回無死1塁、相手チームの選手が打席に入っていたとき、主審が激しい口調で「次に何かを言ったら退場させる」とブーン監督に伝えたとき、ブーン監督も「わかったよ」と左手を挙げて示したのですが、主審が突然ブーン監督に退場を宣告したのです。ブーン監督のいるベンチ後方の観客席が言った暴言を主審に間違えられたようでした。いつも主審に怒りを向けているという言動パターンが招いた誤解だと思います。徳川家康の家訓に「怒りは敵と思え」というのがあるそうです。怒りをマネージメントできていればこのようなことはなかったと思います。