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C02. うつ病・うつ状態

更新日:2月11日

うつ病は日本では年に約3%、アメリカでは約5%~6%発症するとされていますが(世界保健機関)、エリートアスリートではその3分の1近くが経験すると報告されています(IOC 2021)。

 症状は表に示したように抑うつ気分興味または喜びの喪失に加えて、食欲の異常や睡眠障害や運動性の障害、疲労や気力減退、思考や集中力、自己否定的な思考、自殺関連などが加わってきます(DSM-5)。回復のためには早期発見、早期治療が重要です。 

 ところで、非定型の特徴を伴ううつ病というタイプがあります。良く知られているうつと症状が異なる点は、うつの期間でも楽しいことややらないといけないことなどがあると一時的に活動できることと、過眠と過食です。このことで「本当にうつなのか?」と誤解されることも多いです。患者さんたちには「オイルの悪い車の状態であり、外から見ると普通に走っていても本人はアクセル全開ですぐにガス欠になる」状態と話しています。

 さらに体が鉛のように重いというのがあります。また、ネガティブに見られていると思って他人の目を気にしてしまうことも多いです。元気なときにはすごく気を遣う人なのですが、うつっぽくなるとみんなにだめな人と思われていると被害的な思いが強くなることもあります。

 このタイプの発症年齢は若く(Stewart JW, et al. 2002)、小学校高学年から10代、20代が多く、不登校や引きこもりという形で現れることも多いです。そして双極性障害という躁とうつの両者が出現する疾患の一部として出現することも多いです。双極性障害の発症年齢の平均は20歳で、生涯有病率は4.4%と報告されています(Merikangas et al., 2007)。アスリートはまさに10代から20代でピークを迎えることも多いことから、アスリートのうつは非定型の特徴を伴うことが多く、双極性障害の可能性も高いです

 治療ですが、休養や認知行動療法のような精神療法とともに薬物療法が行われます。ここで注意しないといけないことは、抗うつ薬は非定型うつ病に効果は乏しく(Stewart JW, et al. 2002)、また若年者ではうつを悪くして自殺念慮を強化したり、躁に転じさせたりすることがあるので極めて慎重に投与すべきということです。むしろ双極性障害のうつに使用する治療薬の方が有効なことが多いということです。

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