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C05. 自己否定の投影

更新日:3月11日

漫画「スラムダンク」(井上雄彦)では、湘北はインターハイ予選決勝リーグで桜木花道のミスで試合終了となり、その2日後、桜木の赤い坊主頭が誕生しました。どうしてこんなことになったのでしょうか?

 ミスをしてしまったときやうまくできなかったときに、「あんなプレーをしてしまって、自分は何てだめな奴なんだ」と自分を責め、自信を失くし、落ち込んでしまう。そんなとき、周りの人たちも自分を批判していると感じることがあります。または自分よりもランクが上の人が自分のことを「下手だ」と馬鹿にしていると思い込んでしまうこともあるかもしれません。

 実際に批判したり馬鹿にする人もいるかもしれません。しかし、ほとんどの場合「考え過ぎ」です。これは「自分が自分を責めているように、周りの人たちも自分を責めているはずだ」と自分の気持ちを他人に投影し、どんどん責められていると思い込んでいってしまう現象で、非定型の特徴を伴ううつ病の症状の「拒絶への敏感さ」にもつながります。自責感を乗り越えるエネルギーや「頭の中で起きている他人からの批判」をやり過ごすエネルギーがなくなっているのです。

 このようなときには、まず立場を入れ替えてみましょう。他の人が同じようなミスをしたら、あなたはその人のことを責めますか、批判しますか?「私はそんなことはしないと思う」と答える人が大多数と思います。または「ランクが下だからだめだ」という考えには至らない人も多いと思います。そうなのです、あなたと同じように、まじめにやっている人のことを馬鹿にするとか批判する人は滅多にいないのです。さらに、自分も失敗することはある、またランクが下だったこともあると思っているでしょう。

 また、試合中などではチームメイトは自分のパフォーマンスを向上させることに夢中で、あなたのことを考える余裕がないかもしれません。またランクが上の人はもっと自分のランクを上げたいと考えていて、あなたのことを考えてはいないかもしれません。従って、他の人が自分のことをどう思っているかと考える必要はないのです。そのような考えに支配されてモチベーションが下がったり、パフォーマンスが下がることの方が重大な問題です。

 「スラムダンク」で、インターハイ予選決勝リーグの1回戦は湘北が負けましたが最後のプレーは残り5秒での桜木花道のパスミスでした。翌日、「自分のせいでチームが負けた」と落ち込んでいる桜木に流川楓は「うぬぼれんな。どあほう。」「てめえがミスやらかすことぐらい最初から計算に入っていた。誰も驚きゃしねぇ、お前の実力はまだそんなもんだ」と言い放ちます。桜木は激怒し、流川と殴り合いになりますが、流川は「お前のミスが勝敗を左右することはねー。負けたのは俺の責任だ俺のスタミナが最後まで続いていれば昨日は勝っていたはずだ」というと桜木は「てめーこそ、うぬぼれんな」と言い返し、さらに殴り合いは続きます。翌日桜木は坊主頭にして練習にでました。桜木も流川も自分の責任で周りもそう思っていると考えていたと思いますが、お互いにその考えを否定し合っています。そして自己否定を前向きなエネルギーに切り替えるために、桜木花道の赤い坊主頭が生まれたということになります。

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