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C07. アルコールの問題

更新日:3月2日

飲酒はコミュニケーションを円滑にする、ストレスを緩和する、適量飲酒は長生きにも繋がる、寝酒、など良い点があげられます。その一方で、飲酒運転や「酒の上でのご乱行」、肝障害などの臓器障害アルコール依存症など良くないことも言われています。適切な飲酒(適正飲酒)は個人によっても異なり、定義するのは難しいと思います。しかし、以下の3点は知っておきましょう。

 1.アルコール分解にかかる時間

 2.酔っているときの言動(急性アルコール中毒)

 3.寝酒の有害性

 「体が酔っている時間」はどれぐらいでしょうか?最近のニュースに、25歳の男性はある日の午後7時から仲間と飲食店で飲酒し、その後、一人で飲食店に行き、翌日の午前4時頃まで酒を飲み、車内で2時間ほど仮眠した後に、「仮眠をしたら頭がすっきりしていて、自分は事故を起こさないと思った」と車を運転し、道交法違反で罰金30万円を支払ったというのがあります。ひと眠りして頭もすっきりしていても体には酒が残っているのです。

 アルコールの代謝能力は個人によって異なり、また同じ人でも体調によって異なります。一般的に男性(体重60キロ)では「1単位のアルコール(ビール中びん1本(500ml)または日本酒1合(180ml)、ウィスキーダブル1杯)を飲んだ場合、3~4時間程度体内にとどまるといわれています。安全のために4時間留まるとすると、夜9時から12時の間に4単位(生ビール中ジョッキー4杯)飲んだとすると翌日のお昼頃まで体にアルコールは残っていることになります。体重100キロの人でも7時過ぎまで残っていることになるのです。酔って運転、練習していることにならないようにしましょう。

 また急性アルコール中毒というと「怪我や昏睡からの死」が思い浮かびます。しかし精神科的には、不適切な性的行動(痴漢行為・不同意性交罪など)や攻撃的行動(喧嘩、暴力、SNSへの書き込みなど)、気分の不安定(自殺など)、判断力の低下(飲酒運転、良く知らない人と二次会など)が生じることが知られています。体でみると「生命の危機」ですが、精神科的には「社会的生命の危機」です。アルコールによる視野狭窄alcohol myopia, Giancola PR, et al. 2010)という状態を引き起こすのです。実際、社会的地位の高い人が電車で痴漢を働いたとか、集団で暴力事件を起こしたというニュースを目にすることがあります。

 最後に寝酒の睡眠に与える悪影響についてです。①アルコールは睡眠を浅くする作用をもっています。熟睡感が得られず、疲れが取れないということです。また、②アルコールには利尿作用があり、何度もトイレに行くことになり、睡眠が妨害されます。飲酒して寝るとイビキをかきます。アルコールによって舌や喉など空気の通り道の筋肉が緩みやすくなり、呼吸しづらくなり、脳が起きて呼吸しろという信号を送り、イビキを伴った呼吸が再開します。寝ている間に何度も起きろという信号が来て呼吸するので、何度も脳は起きてしまっています。従って寝酒では適切な睡眠が得られません。また寝酒を続けていると「耐性」(酒に強くなる)が生じ、身体依存も作られていきます。アスリートは睡眠が大事ですが、その適切な睡眠を邪魔するのがアルコールということになります。

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