C08. パニック症
- Professor M
- 4月7日
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アスリートは人前でパフォーマンスし、そのパフォーマンスは仲間を含む多くの人たちから評価され、時には過剰な批判を浴びることもあります。したがって、アスリートは人前に出てパフォーマンスすることに慣れていると思われがちですが、むしろ人前に出ることへの緊張や他人の評価への敏感さが生じることもあります。
緊張する場面では自律神経の交感神経系が優位となり、心拍数増加や呼吸数増加、筋緊張、手足のしびれなどが生じます。これは多くの人が体験する不安反応で、アスリートでも試合前や大事なパフォーマンスの直前などに体験します。

しかし、「心臓が破裂してしまうのではないか、止まってしまうのではないか、死んでしまうのではないか」「気を失ってしまうのではないか」という強い死への恐怖に襲われます。さらに「恐怖心から異常な行動をしてしまうのではないか」という、自分を自分でコントロールできないという不安にも襲われます。そうすると一気に動悸などの不安症状は激しくなるというパニック発作に至ります。誰でもが体験する緊張する場面への不安反応から、生命の危機に対する不安反応に変わるのです。
この生命の危機に関連したパニック発作を経験すると、また発作が起きるのではないかという予期不安を抱くようになり、動悸などの症状を観察するようになります。そうするとちょっとした心拍数増加などにも「また発作がくる」と不安になります。そのため、交感神経が優位になるような状況や、パニック発作が生じて意識を失ったら周りの人に迷惑をかけるだろうという状況を避けるようになります、また避けなかったとしても動悸などが生じないように安全な行動をとるようになります。結局、プレーに集中できなくなる、または試合に出られなくなってしまうことになります。これをパニック症といいます。
まず、恐れている心臓など身体的変化の受け止め方を修正する必要があります。これを認知の修正といいます。動悸などの身体的変化によって「死んでしまう」「気を失ってしまう」「不安で異常な行動をしてしまう」と強く心配してしまっています。これを認知の歪みといいます。このパニック発作は不安とその反応から生じているので、不安になっていること自体が原因であり、一般に死に至るとか、気を失うことはありません。更に、実際には死んだこともないし、気を失ったこともない、異常な行動をしたこともないのです。これが正しい受け止め方なのです。すなわち、パニック発作は「死ぬ」「気を失う」「異常な行動をしてしまう」というのは過剰な心配であり、身体の症状はその心配し過ぎていることへの不安反応だと受け止め方を修正します。
次にこの歪んだ認知を維持させてしまう行動をとってしまっているので、行動を修正します。この場合不安なために避けている場面に段階的にチャレンジしていくという、段階的暴露を行います。このとき、最高に不安な場面を100点、不安の全くない場面を0点などと、暴露する場面に点数をつけ(不安階層表)、低い方から段階的にチャレンジします。このようなチャレンジでは当然、不安感が高まり動悸など生じてきます。しかし、「死ぬ」「気を失う」「異常な行動をしてしまう」ことはないということを体験します。その結果、「ああ、この修正した認知は正しいのだ」ということを体験を通して確認されるのです。ただ、このチャレンジは不安が大きいので、腹式呼吸などのリラクゼーション法を使って不安を軽減しながら、そのままチャレンジを続けていきます。